売却代金と譲渡所得を分けて考える
相続財産を取得したときの相続税と、不動産を売ったときの利益にかかる税金は別のものです。相続税を支払った場合でも、売却による譲渡所得の計算は必要です。譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。特別控除を使える場合は、その適用条件を確認したうえで課税対象の金額を求めます。
相続した不動産の取得費は、原則として被相続人が購入したときの代金や購入手数料などを引き継ぎます。相続時の評価額や売却時の査定額を、そのまま取得費にはできません。建物は購入代金などから減価償却費相当額を差し引くため、土地と建物を分けて計算します。所有期間の判断でも被相続人の取得時期を引き継ぐので、相続してから短期間で売ったという理由だけで短期譲渡になるわけではありません。
購入時の資料が見当たらない場合は、保管書類や購入先に確認しましょう。取得費が分からないときなどは概算取得費を使う方法がありますが、実際の取得費を確認できる場合と税額が変わることがあります。資料がない段階で税金を少なく見積もらず、確認できた金額と不明な項目を分けて試算してください。
取得費と譲渡費用に入る支出を区別する
売却のために直接支払った仲介手数料などは、譲渡費用の対象になります。測量費や建物の取壊し費用なども、売却との関係や支出の目的によって扱いを確認します。一方、固定資産税や通常の修繕費など、維持管理のための支出は、そのまま譲渡費用に含められません。売却までに支払った費用すべてを一括して差し引かないようにしましょう。
相続登記の費用は、取得費に含められる場合があります。登記費用をすべて譲渡費用とするのではなく、手続きの内容、事業で使っていたか、概算取得費を使うかなどを踏まえて確認してください。領収書に加え、請求書や作業内容が分かる資料を残すと、費用の分類を確認しやすくなります。
取得費加算と空き家の特別控除を確認する
相続した財産を売る人に相続税が課税されている場合は、一定の要件を満たせば、相続税額のうち一定額を取得費に加算できます。取得費加算の特例では、相続税を納めた額のすべてを加算できるわけではありません。売却した財産に対応する金額や譲渡益の上限を確認し、相続税の申告書と計算明細書を使って整理します。
被相続人が住んでいた空き家とその敷地等を相続して売る場合には、譲渡所得の特別控除を検討できます。ただし、空き家であればすべて対象になるわけではありません。建築時期、区分所有建物かどうか、相続前の居住状況、相続後の利用状況、耐震性や取壊し、売却価格、買主との関係などを確認する必要があります。家屋等を取得した相続人の人数によって控除の上限が変わる場合もあります。
取得費加算と空き家の特別控除では、売却時期の条件が異なります。同じ家屋や敷地について両方を併用することはできないため、適用可能な制度で税額を比較しましょう。売却後に耐震改修や取壊しを行う形でも対象になり得ますが、実施時期や必要書類の条件があります。工事を決めたり売買契約を結んだりする前に、申告の相談先と確認してください。
申告用の資料と代金の精算記録を保管する
売却で譲渡所得が生じる場合は、原則として確定申告が必要です。特例によって課税対象の金額がなくなる場合でも、特例を受けるために申告が必要になることがあります。相続税の申告と不動産売却の申告を分けて確認し、申告時期や必要書類を売却前から整理しましょう。
- 売却時の売買契約書、代金の入金記録、精算書
- 被相続人の購入時の契約書と取得費を確認できる資料
- 仲介手数料や測量費などの請求書と領収書
- 登記事項証明書と相続登記・遺産分割の関係書類
- 特例を使う場合の計算明細書や確認書類
共有不動産を売った場合は、それぞれの持分や取引内容に応じて収入と費用を整理します。代表者が代金を一括して受け取った場合も、各人への分配記録を残し、各人の申告内容と整合するか確認してください。電子申告を利用する場合は、利用方法と添付書類の扱いを確認し、送信後の受付結果と申告書の控えも保存します。売却代金を分配する前に費用と税金の見込みを確認しておくと、資金不足を防ぎやすくなります。
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